横浜市立大学
  国際総合科学部 生命環境コース
  大学院 生命ナノシステム科学研究科 生命環境システム科学専攻

植物発生生理学研究室


研究紹介

概要(キーワード)

 

種子と胚

 

種子の乾燥耐性と休眠

 

アブシシン酸(ABA

 

不定胚

 

水チャネル(アクアポリン)

 

海草(アマモ

 

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種子と胚

 種子植物では、次世代は種子として伝えられます。種子は、植物体へと成長する、栄養を蓄積する胚乳、保護組織である種皮などの組織から構成されています。中でも胚は、受精卵から発生し、短時間で形態形成に関するさまざまな変化が起きるため、大変興味深い研究対象です。

 

種子の乾燥耐性と休眠

 種子は形態形成が終了すると、成熟し最終的に乾燥した状態で休眠します。休眠は、寒さや乾燥などの生育に適さない環境条件を乗り越えるために必要な生理現象です。一定期間休眠した種子は、適当な環境条件(温度、水分、光など)が揃うと、休眠を中止して発芽を開始します。このことから、種子には乾燥や低温に耐えるためのメカニズムが存在すると考えられます。
 種子の休眠や乾燥耐性は、植物ホルモンの一種である
アブシシン酸(ABA)によって調節されています。種子発達の後期にはABAが一時的に増加し、そのあと種子は休眠に入ります。増加したABAによって多くの遺伝子が発現誘導され、その結果、休眠性や乾燥耐性が誘導されると考えられています。

 

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(図)種子発達時のABAと水分の変化の模式図

 

アブシシン酸(ABA

 植物には、形態形成や生理現象を引き起こす物質として、植物ホルモンが存在しています。植物ホルモンは植物体内で合成されます。そして、植物ホルモンの種類・濃度・分布の違いによって、さまざまな形態形成や生理現象が調節されると考えられています。
 ABAは植物ホルモンの一種で、植物が乾燥や低温などの環境ストレスにさらされた時に合成されます。このABAによって植物細胞ではさまざまな変化が起こり、環境ストレスに適応する能力が獲得されると考えられます。
 また、ABAは植物が環境ストレスを受けた時だけでなく、発生のプログラムに従っても合成されます。成熟中の種子や冬芽などの器官がそれに該当します。合成されたABAによって、種子の乾燥耐性や冬芽の休眠が誘導されます。

 

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(図)ABAの構造式

 

不定胚

 胚は、種子の中で実際に新しい個体へと成長する組織です。種子の中にある胚(受精胚)は、受精卵から発生し、球状胚・心臓型胚・魚雷型胚の順番に発達します。しかし、受精胚はまわりを胚乳や種皮などに被われているため、直接観察できません。また、胚だけを単独で取り出すことも困難です。
 植物細胞には、一度特定の器官に分化した細胞から再び新しい個体が生じる能力(
分化全能性)があります。この時、新しい個体が胚として生じる場合を体細胞不定胚形成と呼びます。不定胚は受精胚と同じように球状胚・心臓型胚・魚雷型胚と発達して、正常な植物体へと成長します。そのため、不定胚は受精胚形成のモデルとして広く利用されています。
 また不定胚には、組織培養によって大量に増殖できる、発達段階を揃えることができる、胚組織が単独で存在し観察や単離が容易である、クローンであり個々の性質が安定している、など多くの研究上の利点があります。ニンジンは、1958年に最初に不定胚誘導が確認された植物であり、不定胚に関する研究が最も蓄積された材料です。

 

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(図)ニンジンの受精胚(左)と不定胚(右)、いずれも魚雷型胚。

 

水チャネル(アクアポリン)

 細胞の内外の水分子の移動は、細胞膜の半透性によって起こると考えられてきました。しかし最近になって、細胞膜に存在する膜タンパク質(アクアポリン)が選択的に水分子を通過させている事実が示されました。アクアポリンは広く生物界に保存されており、種子植物では30種類以上のアクアポリンが存在します。胚発生でも、胚の発生・成長や休眠・乾燥などに関わるアクアポリンが機能していると考えられます。

 

海草(アマモ)

 海で生活る植物としては藻類(海藻)が一般的ですが、一部には種子植物(海草)も存在しています。海草は種子植物であるため、陸上の種子植物と同じように種子をつくります。代表的なものがアマモです。アマモは浅い砂地の海底に生育しており、アマモが群生した場所をアマモ場と呼びます。アマモ場は、一次生産能力が非常に高く、また魚介類の生活や繁殖の場としても重要な役割を果たします。しかし、埋め立てや水質汚染が進み、天然のアマモ場は減少してしまいました。

 

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201452日更新