横浜市立大学
  理学部 理学科
  国際総合科学部 生命環境コース
  大学院 生命ナノシステム科学研究科 生命環境システム科学専攻

植物発生生理学研究室


研究紹介

研究方法

 

植物組織培養

 

不定胚誘導

 

不定胚の乾燥処理

 

細胞生存率の測定

 

水分量測定

 

植物への遺伝子導入

 

遺伝子発現解析

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植物組織培養

 植物組織培養は、栄養分を含んだ培地で植物細胞を無菌的に生育させる技術で、細胞融合や遺伝子導入などの操作を行う際に不可欠な技術です。
 植物のさまざまな組織(分裂が盛んなところがよい)を表面滅菌し、無菌的に調製した培地に植え込みます。培地には、糖分、ビタミン、ミネラルなど必要な栄養分が含まれており、光がなくても植物細胞を生育させることができます。これによって、通常より早い増殖や通常では生育できないような組織だけ(根など)の培養が可能になります。
 培地の中に植物ホルモン植物化学調節物質を加えることで、形態形成や細胞増殖を調節することが可能です。また、必要に応じて光照射や振とうを加えます。培地は液体で用いる場合と、固体で用いる場合があり、実験の目的によって使い分けられます。
 無菌的な操作はクリンベンチ内で行い、その際に使用する器具は全て滅菌処理を行います。

 

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(図)ニンジンの組織培養(左:液体培地、右:固形培地)

 

不定胚誘導

 不定胚誘導は、ニンジン実生(めばえ)の胚軸を植物ホルモン・オーキシンの一種である2,4-Dを含むMS培地で培養して、脱分化した細胞の塊(カルス)を得ることから始まります。このカルスは、不定胚を形成する能力を持つため、Embryogenic cellと呼ばれます。このEmbryogenic cell2,4-Dを含まないMS培地に移して培養すると、不定胚が形成されます。この時Embryogenic cellの大きさを揃えておくと、不定胚の発達段階を調節することができます。
 この系とは別に、ニンジンめばえの茎頂部をさまざまな
ストレス(重金属、熱、高浸透圧など)で処理し、その後ストレスから解放して培養すると不定胚が形成されます。この系ではオーキシン(2,4-D)を使用しないので、オーキシンの生理作用を除いて解析することが可能です。

 

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(図)ニンジン不定胚誘導の模式図

 

不定胚の乾燥処理

 一定期間ABA処理したニンジン不定胚を滅菌水で洗浄し濾紙の上にならべ、シリカゲル粒子上で乾燥させます。乾燥開始1時間でほぼ完全に脱水されますが、通常3時間の乾燥処理を行います。乾燥後、不定胚は濾紙と共にMS固形培地に移動させ、吸水させます。そのまま2週間培養し、生存率を測定します。

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(図)ニンジン不定胚の乾燥処理の模式図

 

細胞生存率の測定

 ニンジン不定胚の場合は、吸水後発芽しますので、成長や緑化によって簡単に生存を確認できます。
 培養細胞などは細胞内の酵素活性を測定することで、生存率を調べることができます。培養細胞をフルオロセイン・ジアセテート(FDA)の溶液に10分間浸し、室温で反応させます。細胞内のエステラーゼのはたらきで、FDAはフルオロセインへと変化します。フルオロセインは黄緑色の蛍光を発するため、蛍光顕微鏡で蛍光を発している細胞(生きている細胞)を観察します。

 

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(図)FDAによる生存細胞の検出(左:透過光像、右:蛍光像)

 

植物への遺伝子導入

 ある遺伝子を過剰に発現させたり、あるいは発現を抑えたりすることで、その遺伝子産物の機能が強調されて観察されることがあります。その際、遺伝子組換えの技術を利用します。
 植物への遺伝子導入方法にはいくつかありますが、最もよく利用されているのが
アグロバクテリウムを用いる方法です。アグロバクテリウムのもつvir遺伝子のはたらきで、T-DNAが植物のゲノムDNA中に組み込まれます。このT-DNAに導入したい遺伝子を組み込んでおくと、植物細胞へ遺伝子導入されます。
 遺伝子導入された細胞を増殖/分化させて、遺伝子組換え
植物体が得られます。T-DNAには目的の遺伝子以外に選択マーカーとして抗生物質耐性遺伝子を組み込んでおき、遺伝子導入された細胞のみを抗生物質耐性で選抜します。
 遺伝子の発現にはプロモーター領域が必要であるため、導入する遺伝子が目的通りに発現するように、プロモーターを選択し一緒に導入します。得られた遺伝子導入植物は、目的の遺伝子産物が発現・機能しているかをノーザン法やウエスタン法で確認します。
 ニンジンでは、実生(めばえ)の胚軸にアグロバクテリウムを処理して、Embryogenic cellから不定胚として遺伝子導入植物を得る方法が一般的です。その他、培養細胞に直接アグロバクテリウムを処理する方法もあります。

 

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(図)アグロバクテリウムによる遺伝子導入の模式図

 

遺伝子発現解析

 遺伝子は、それぞれ発現する時期や部位が決まっています。遺伝子の発現解析は、その遺伝子産物の機能を知る上で重要な情報となります。
 発現している遺伝子は細胞中でmRNAとして存在し、さらにmRNAはタンパク質に翻訳されます。遺伝子の発現量は、mRNAの蓄積量を調べるRNAブロット解析(ノーザン法)やRT-PCR法、タンパク質を抗体を用いて検出するウエスタン解析などで調べられます。
 遺伝子の発現はその近傍にあるプロモーター領域によって制御されています。このプロモーター領域にレポーター遺伝子を連結することで、プロモーターの働きを可視化することもできます。

 

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(図)ニンジン培養細胞のGUS染色像
GUS
遺伝子が導入された細胞塊が青く染色されている。

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201941日更新